OUR STORYー1ー

「心もおいしいのよ」

 
 この日本で、福祉工場が作り出す食品の美味しさを知らないなんて、とても「もったいない」ことですと、トップページで紹介した続きです。
 むかし、テレビのドキュメンタリー番組で見た感動の場面を思い出します。それは、ダウン症のことでいじめられてきたという、しかしすべてのレシピが頭に入っているという、まだ少女のようにしか見えない先輩が、新入りの調理スタイルに身を包み、真剣な表情の青年にマドレーヌの作り方を教えていて、さいごに 「心も入れてね。心もおいしいのよ」と、その背中をなでながら優しい声で励ましていたのです。
 

人生で出会うことばの最高のひとつ。年月が経っても、あの時の感動が薄れることがありません。鎌倉でも市役所や行政センターで、施設の手作り製品の販売に出会うことがあります。ボランティアの方が付き添っておられて、購入後は皆さまの満面の笑顔で見送られるのです。特にクッキーや焼き菓子の素材の良さ、混じり気のない素朴で純粋な味わいは食べ飽きないものです。  

見知らぬ東北の町、いずれ大ブレーク

 

 
東北に未曾有の災害が起り、SOHOの私に何かできることがないかと考えていました。長いおつきあいのある静岡の茶園から、高級茶葉を練り込んだ卵煎餅が送られてきて、その表面の焼印を見たとき、いろいろ商品化を考えてきた私のお煎餅キャリアに火がつきました。
 
小さな玩具が和紙に包まれて入っている山形県鶴岡市の「からから煎餅」や、陶製の小さな幸運の人形が一つ入っているフランスの「ガレット・デ・ロワ」という大きなパイなど、その景品の方に魅かれたりもしてきましたが、QRコードを醤油煎餅に印刷したこともあるのです。
 
すぐに検索で、大被害を受けた岩手三陸鉄道の「久慈ありすイラストそのまま煎餅」に出会う。早速取り寄せる。製造者は岩手県久慈市の社会福祉法人「あすリード本舗」。
 
名前も聞いたことのない東北の町。でも行かねばならぬ!
翌々年の2013年4月、NHK「あまちゃん」で大ブレークを起こす町!
 

 

 みごとに美味しいラーメン・うどん・お煎餅

 

さぞかし豪雪地帯かと思いきや「いや〜年内はあったかいです」と意外だ。背骨のごとく東北新幹線「はやて」で「二戸(にのへ)」へのぼり、あばら骨はJRバスで、リアス式海岸沿いの「久慈市」に着くらしい。

「あすリード本舗」は、その2011年4月に障害者自立支援法における就労継続支援A型事業と就労以降支援事業を組み合わせた多機能型事業所へと移行。それに伴い「福祉工場みずき」から施設の名称をこちらに変更なさっていました。

ファックスで工場長様宛の「施設見学願」を出してほしいといわれ、一般企業ではないことをあらためて肝に命じる。日時は2011年11月22日(火)という、ぞろ目の日。訪問目的もいる。1、鎌倉土産としての「プリント南部せんべい」の開発 2、非常時食品「いざ鎌倉缶」(おでん、米飯、パン缶他)の開発 とした。
 
すぐに、確認済のゴム印が押されて、宿泊先もお願いしていたので「市内のグランドホテルを予約しました。朝食付¥6,800。お待ちしております」と、N氏のお名前で返信のファックスが届きました。

 
当日はなんと正午ジャストという到着時間になり、約束の午後一時まで外周りをゆっくり見学させて頂くことに、天候もよく暖かい。広大な敷地に、いくつもの大きな施設がゆったりと配置されている。建物の中の方と目が合うと、人懐っこい笑顔がまっすぐに返ってくる。

「いざ鎌倉缶」なるものを、相談項目に入れたのは、それまでに「海鮮らーめん」や「じゃあじゃあ麺」「かりんとう」「胡麻・ピーナッツ等の南部煎餅」の生産品を送ってもらっていて、もう見事においしくて、その食品製造能力の高さに驚かされていたからです。
 
あまちゃん南部煎餅
工場長と営業のN氏とのお話も尽きなかったのですが、まずは製麺室から工場を案内して頂きました。一日最大二万食の麺が作れるそうです。お煎餅は、食用インキを使ったインクジェットプリンターで、タイミングよく白煎餅を並べていくと、たちまちカラフルな可愛いイラストが出てくるという楽しさ〜* この「プリントせんべい」は8年前から作られているとか。麺はもっと早く14年の歴史(2013年当時)。

シャイな人たちばっかりで、下を向きながらの作業をやめることなく、でもニコニコと迎えて下さっているのがよく分かります。そして一巡後、N氏から「らーめん」を売ってほしいが、どうでしょうかと持ちかけられました。

東北とのご縁

 

あのぞろ目の日。2011年11月22日。行きたい所があれば車で回りますと、言ってくださったNさんにお礼を言いながら、帰途はまっすぐ宿になるグランドホテルに送って頂くことにしました。何の予備知識もなく久慈市に来てしまっているのです。
 
道は川沿いだった。その川を津波がのぼってきたのだと。途中の合流地点で二つに川が分かれているので勢いがそがれ、N氏のご自宅は被害が免れたのだと。静かで広くて穏やかな東北の町。
 
学生時代のさいごの年に「賢治祭」に訪れて以来なんのご縁もなく、果たしてこの先ご縁ができるのだろうか。
 
ラーメン作る側になるという覚悟は、確か、製麺機の大和製作所の繁盛店をつくる極意、ラーメン道的書籍があるはず。後日注文する。一冊 31,500円+代引送料 計:32,620円也。

ラーメン作る側になるという覚悟は、確か、保健所の許可がいるはず。後日問い合わせる。包装された食品をパッキングするだけでも、自宅のキッチン以外に専用のキッチンがいるなり。

ラーメン作る側になるという覚悟は、世の中の手に入るラーメンをことごとく食べ尽くすべし。そして後日、パソコンで注文できる通販のラーメンを片端から注文していくことになりに候。

「完熟らーめんって何?」

 
 
製麺室から南部煎餅の製造室に移動する時の通路の壁に、模造紙を横長に張り合わせて、手書きの「海鮮らーめん」説明付きポスターがありました。そしてそこに「 三日間熟成、完熟しているから、シコシコとおいしい」とか書かれてあったのをチラッと見ていました。
 
「完熟」「かんじゅく」「カンジュク」「KANJUKU」。メロンではなく、ラーメンにも「完熟」なるレベルがあるなんて、ここの廊下で初めて知りました。

しかし今や、家族中の大好物になった「海鮮らーめん」の外箱をいくらひっくり返して詳細に眺めても「完熟」とも「三日熟成」とも書かれていない。外箱のイメージ写真、カニ・エビ・ホタテ・ホッキ貝・ワカメ・ネギなどの海鮮具材に心を奪われるだけです。
 
実は、最初に「海鮮らーめん」を送って頂いた時、そのパッケージの図柄を見て、まさかと思いながらも、これらの具材が箱の中に入っているといいなあとワクワクしたのだから、そのあとのがっくり度が分かっていただけると思う。しかし、その海鮮スープのエキスの旨味ときたら、満点だった。

本当に入っていると期待した証拠に、今後「あすリードラーメン」を販売するには、写真のような具材をのっけたいと、N氏に宣言する始末。そしてN氏も協力できることがあったらしますと請け合って下さったのだ。

「具ラーメン」より「素ラーメン」

 

「完熟らーめん」のおかげで、結構な数になったお取り寄せラーメンの麺は、っぽくボソボソとおいしくないことに気づいてしまった。においに敏感虫歯なしという、味覚万能のツワモノがいる家族なのである。「完熟らーめん」に比べて、他のは麺にコシがない、パワーがない、生きていないと感じるなんて思ってもみませんでした。

                                                           

具材もかなり考えました。チャーシュウ、乾燥わかめ、干しえび、トウモロコシ、九条ネギ、山椒粉、乾燥七草など。そして「新含気調理システム」という調理法に出会ったことはとても大きな収穫でした。殺菌のために長時間加熱する「レトルト」と違い、袋内で調理・殺菌を短時間で行って高品質を保持し、保存料不使用で常温での保存も可能というものです。海外での普及がめざましく、こちらの社長さん(女性)とは今も仲良し。

 

いろいろ食べ尽くし研究し尽くした結果、ラーメンは「素ラーメン」が一番!「麺が命」なのだと分かりました。うどん県の香川で、地元の通の人は「素うどん」を注文し、大きな「かき揚げ」に魅かれて注文したよそ者(誰だ?)は、持て余してしまったことを思い出します(笑)

 

「あすリード本舗」さんには「ほうれん草ラーメン」もあり、これを「七草粥」代わりの「七草らーめん」もいいなと思いついたことから、そうすると、地粉で「紅白のうどん」を作ってもらいたくなりました。素材にこだわり、最初は人参で試してもらったのですが、赤くならず食紅を使うことに。そして「おせち麺」にたどり着くことになりました〜*

一年中一定の温度(16度C)が保たれる施設の建物があるからこそ、完全熟成の環境が可能になります。

 

「も・っ・た・い・な・い」

 

 地元の人にとって「あすリード本舗」さんの「南部男の無口なじゃあじゃあ麺」や「海鮮らーめん」が、どこよりもおいしいのは当たり前。生地の段階で熟成させるなんてことは、麺づくりの基本。「円盤型のかりんとう」や「栄養たっぷりの南部べっぴん煎餅」もすべて機械化されない手作りでしか作り出せないことが常識となっている。
 
 また観光ができるとも思わず訪れましたが、実は大自然の宝庫。「陸中海岸国立公園公園」「北限の海女」「久慈産琥珀」「べっぴん温泉」「白樺林」「三陸鉄道」、夏は海や渓流、冬はスキー場、また柔道の三船十段の故郷であり、記念館(黒川紀章設計)の道場では日々の練習と国際親善試合などが行われている、などなどを「ひとつの市」(県ではない!)で持っておられて、驚いてしまったのです。
 
東京生まれの主人公「あまちゃん」は、母親役の小泉今日子さんが「なんにもない町」という、その母の故郷にたちまち魅了されて元気になっていきます。祖母役の宮本信子さんが「海に潜ればお金が落ちている」と言うほど、実際にもとてつもなく恵まれている町だと思います。
 
本当に「」も「完熟らーめん」も「もったいな」がぴったり。
あまちゃんは「町」を有名にしました。
私は「完熟らーめん」を有名にしたいと思います。


 

 

                 

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